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工作機械・鋳物の枯らし迷信
2016/02/18 20:59
吹聴する誰彼はさておき、依然、広範囲に迷信が残ってると思います。
とっくの昔に止めたとの話は聞くが、(K・Hながら)データが殆ど出ないのが残念です。
データあれば提示願いが、あのメーカやってないよ の情報も書込んでください。
【迷信の発信元】検索トップ
http://summit.ismedia.jp/articles/-/472?page=3
工場の裏庭で見たドイツの工作機械の秘密・橋本久義
私がドイツに赴任していた当時(1980年頃)、日本の工作機械メーカーの方も多数お見えに
なったのだが、「どう頑張ってもドイツの精度は出せない」と異口同音に嘆いておられた。
工場の裏庭にベッド鋳物がたくさん放置してあって、錆だらけだった。
鋳物は溶融した鉄が冷える際に、歪みが鋳物の中にたまる。これが時間とともに鋳物にゆがみを
もたらす。だから日本では熱処理をして、焼き鈍し、焼きならし等をして内部応力を取り除く。
だが、一番いいのは鋳物を枯らせることだ。つまり、時には10年以上の時間をかけて狂うだけ
狂わせて、安定した状態になった鋳物を使うことだ。
【実情調査】
http://www.rieti.go.jp/jp/events/e01071301/pdf/chuma.pdf
資本財産業におけるモジュール化:半導体露光装置vs工作機械産業
2001 中馬宏之(一橋大)
国内12社から聞取り調査 海外含め883社にアンケート調査(回収率悪)
鋳物に関してであるが、20年以上も前には、有力な工作機械メーカーにはほぼ例外なく
鋳物工場があり、さらに、出来上がった鋳物を長期間枯らす(=残留応力を空気中で自然に
除去する)目的で至るところに鋳物が散在していたという。
ところが、工作機械の精度を経年的に狂わす元凶としての鋳物内の残応力を焼鈍炉の中で自動
的に効率よく取り除く技術に代表される最適制御技術の発達・標準化によって、各メーカーから
鋳物工場のみならず鋳物の枯らし作業が消えていった。
【超精密機械の基礎】
W.R.ムーア著1970年刊 和訳1979年刊 訳は長岡俊郎氏他三名のニコン技術者
?.鋳造技術
鋳造技術は安定性における要因であり、それゆえ最終精度における要因である。
A.鋳鉄を「適正な組成」にすれば、機械加工性、耐摩耗性およびキサゲ面の質は向上する
(悪い鋳物や巣のある鋳物をキサゲすることは物理的に困難である)。
B.鋳物の安定性は主として鋳造した後、鋳型の中で行われる均一な徐冷に依存する。
したがってこれは鋳型が適切に設計されているかどうか、又鋳物が空気にさらされる
前に完全に冷却するよう充分な時間がとられているかどうかにかかっている。
前述の二つの仕様を満足させる鋳物よりもっと安定した金属は恐らくないであろう。
金属の安定に関するわれわれの信頼は確固とした統計的証拠に由来している。
すなわちこの文書を書いている時点(1970)で7000台以上にも及ぶ精密工作機械の
製造を30年以上行ってきた経験に基づくものである。
鋳鉄の先天的な安定性は NPL(英国立物理学研究所)の Nickols によっても確認された。
彼は鋳鉄の安定性について7年間にわたってテストを行ったのである。
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?.鋳鉄の機械加工
その安定性にもかかわらず鋳鉄は機械加工、特に表面の部分を相当量削ればその平衡状態が
変わるという点では他の金属と同じである。
仕上げ加工の前にクランプをゆるめ、加工物にかかる力を取り除く。その後に曲りを
生じないよう適当にクランプすることが大切である。
加工物に応力が残るか残らないかは機械加工される時の方法いかんによる。
重要な機能を持つ鋳鉄の表面を機械加工するには1本バイトで平削りする方法が望ましい。
この裏づけは、機械加工が鋳鉄にどのように影響するかをみるために行われた、次の実験によく
現れている。鋳鉄のくさびをテストピースとして使って1本バイトによる平削りを行った
ところ、くさびの機械加工による反りは最も少なく、以後完全に安定しているであろうという
ことがわかった。くさびをフライス加工した時には機械加工による歪みがより大きく発生し、
くさびの応力が除去されるまで続くと思われる恒久的な不安定性が見いだされた。
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結論
鋳鉄の部品は安定化させるために野ざらしにし、錆びさせ、熟成させなければならないという
理論は昔から繰り返しされてきた。
正確な測定設備や充分な温度コントロールがない状態で、鋳鉄の安定性は非難されていた。
不安定であると決めつける前に、機械加工の方法や変形、又最もケースの多い温度変化による
影響まで原因をたどっていくべきであったのである。鋳鉄は理想的な材料である。
鋳鉄は理想的な材料である。鋳鉄はすぐに役立つし、形をとるために容易に鋳造され得るし、
比較的湿度の影響を受けない。
それは鋼とほぼ同じ膨張係数を持ち、品物がキサゲされるとき当りが出しやすい。そして中でも
最大の長所は、鋳鉄は最も安定した材料のひとつである、ということである。
これらの長所はいかなる鋼にも、御影石にも、あるいは代用物として考えられる他の材料にも
ないものである。
【本の背景?】
ムーアといえば治具グラインダーの代名詞に近いほど著名。発行は輸入元の国際工機
注目すべきは【実情調査】と同時期の出版。日本メーカとの交流も同時期。米工場訪問の企画ツアーまであって、ムーアは隠すことなく見せた。
http://www5.matsuura.co.jp/japan/news/2012oct/201210P06.pdf
1980~ 松浦機械会長と代替り後も交流続く
http://itabashi.or.jp/company/geocities.html
現社長が25歳の頃、米国ムアー社の発行した超精密機械の基礎の文献を読み感動し、
ものづくりのあり方を哲学として持つとともに、、、
日本の工作機械業界に与えた影響は実に大きいといえる。
訳者がニコンなのは【実情調査】にある半導体機器ステッパーの開発に絡む(と類推)
↑NHKスペシャル『電子立国日本の自叙伝』においてステッパーの摺動面をラップする場面あり。
【本の背景?】
ムーアの機械ベースはダブルVと称し、上下とも同じ形にキサゲ仕上げして、下のVに◇のバーを嵌込み摺動する構造。
| ̄V ̄ ̄ ̄V ̄|
調整では180°回して入替(職人語でトンボ)できるので真直性を追究しやすい。
◇のバーは表面HRc70の窒化鋼をラップ仕上げ。耐摩耗抜群で上側の鋳物面は摺動で摩耗しても精度は保たれるとする。
送りの位置決めは29°台形ねじで同じく窒化鋼のラップ仕上。公差はフルストローク400~で2.5ミクロン(の片側公差)と驚異的で、しかも10年保証。
キサゲはともかく、ラップのワザは容易でなく、工作機械ではコストが合わず、見学できても真似するところはニコンの他に現われなかった。
また摺動面は高速移動には不向き、台形ねじ位置決めは常に片寄使用の欠点があり、NCの、リニアガイド+ボールねじ+スケールフィードバックには勝てず、ムーアは次第に没落していった(社名と機械は現存)
【超精密機械の基礎】 結論 鋳鉄は理想的な材料である を重複させたミスプリ
【本の背景?】
この本は古書、ヤフオクに殆ど現われない。
国会図書館サーチで調べると所蔵する図書館は4県。
高専・大学図書館蔵書の検索では46件あり、門をくぐると閲覧できる。
国際工機は1990年までに治具グラインダー600台を輸入との情報。その後伊藤忠マシンテクノスに吸収、さらに昨年末に商権委譲。
http://www.enablekk.com/products_TOP.html
その経緯から再刊は絶望的。
私は刊行を知った直後に購入し、加工技法や測定法についてはバイブルとして繰返し精読したが、本件の枯らしについては流し、記憶が薄れてました。
しかし機械メーカとの折衝で鋳物のうんちくを聞く機会もあり、枯らしは絶滅し、炉での焼なましに移行したのであろうとの認識。
なのでキッカケとなった質問には即反応し回答
No.43845 材質SUJ2の焼き入れ焼き戻し後の寸法の経年変化
自然枯らしはイマドキ流行ってません
しかし調べてみると、【迷信の発信元】が検索トップ。
これは放置できぬと【実情調査】が時点での認識とマッチしたが、具体性に欠けるので、手元の書籍を見直し【超精密機械の基礎】で焼鈍も不要と知る。
加工技法で得た知識の例
・?.鋳鉄の機械加工にある平削盤の効用
・芯合せ
測定法
・ステップゲージ。ミツトヨはチェックマスタと称しブロックゲージを組合せる。三次元の校正
に多用するが、ムーアはその元祖と思え、一体をラップ仕上するので、遥かなる高額。
その他、角度割出しなど数えきれぬほど。
回答 (13件中 11~13件目)
迷信かどうかわ知らんが
リークテストでデータを取り
テスト品廃棄後
一家げず雨ざらしの状態で
上がリークしたものを見たいて負ったので
赤箱から発掘して
リーク測定したら
漏れが確認できなかった
その後ここで
バルブ品はからしをするよという話を聞いて
おおそれはいい案だと思ったが
ダイキャストからは離れてるし
理屈はわかるが
証明できんからなぁ
と頭がぐるぐる駆け回る
と壊れるわけだ
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この質問は投稿から一年以上経過しています。
解決しない場合、新しい質問の投稿をおすすめします。
もう十年以上昔の話ですが
具体的に愛知県の所謂工作機械銀座付近の会社では(3社共)
ドイツと同様に裏庭に大量のベットが積んであった
ただ、枯らし期間が何年モノなのかは知りませんが
残念ながら現在の状況は知りません
補足
2016/02/20 11:45
情報ありがとうございます。
その通りで追記二つ目のように80年を境に絶滅したようです。
超精密機械で有名な米・ムーアの本に詳しい説明を見つけました。
データは載らないが在り処を示し、英国の1940年!!
筆起中で来週に紹介します。
15年以上前に工作機械(マシニングセンタ)に関係する仕事について
いました。
摺動面→直動ガイド、BT50→BT40、外付けモータ→ビルトインモータ、
DCサーボ→ACサーボ、アナログ制御→デジタル制御、と10年余りに
大きな技術的変革が続き、機種のライフサイクルもどんどん短くなり、
どんどん新製品へと置き換わった時代でした。
また、コストダウンの一環として、鋳鉄製主要構造物を国内調達から
中国・韓国調達へと大きく変換した時期でもあります。
ということで、頻繁なモデルチェンジ、海外調達などの理由により、
あっというまに鋳物の枯らしなる概念はなくなりました。
それどころか、売れ筋機械の鋳鉄ワークは、海外から到着した翌日
には機械加工されることもしばしばでした。
もちろん枯らしを止めたことによる、精度、剛性、耐久性などの
クレーム発生は記憶にありません。
現在、量産タイプの工作機械で、鋳物構造物を意図的に一定期間枯ら
しているケースは、ゼロとは断言できませんが極めて少ないと思われ
ます。
三面摺り合わせにより高精度仕上げた鋳鉄製マスター定盤は、
素材を十分に枯らしたとも聞いたことがあります。
小生にだけコメが付かないのは嫌われましたか...
それとも回答内容に問題あり?
なるほど昔からあまり根拠なく迷信が伝聞されてきたのですね
ご存じの通り工作機械は、景気が悪くなる前に受注が減り始め、
景気が立ち上がってから受注が回復する因果な商売です
売れずに素材の鋳物が山積になっていても、「枯らしています」
といえば、来社したお客さんは納得(苦笑)
直動ガイド、バックラッシのほとんどない予圧のかかったボール
スクリュー、高精度かつ安価なサーボモータ+制御装置、の普及で、
研磨工程や職人技が無くてもソコソコの精度の工作機械が量産でき
る時代に変わりましたね
補足
2016/02/23 10:58
とんでも・・・・巨大追記をご覧あれ。
ムーア治具グラは、大きくはない機械ながら、機械的電気的な補正に拠らず精度フルストローク2.5μの10年保証。その鋳物は枯らしも焼鈍もやってないと会社トップが知れば、即刻旧習を打破しろと厳命を下したはず。其処が精度ソコソコで低コスト指向であったとしても。
また大型機をユニット分解しても入れる炉は半端ない巨大になるし。
ムーアの鋳鉄製マスター定盤は本に1ページ大のカラー写真があり、1.2?正方形、リブを巡らして重量1.1?、三点支持を基本に計12点の支持点と公表してます。
重量もサイズもキサゲ擦合せの限界で、超えると精度が犠牲になってくるとの考えでは。
ちゃんと測りなさいのレーザー測長機はまだ高価、恒温室も半導体工程の進歩を待って改良と普及、という時代背景があって日独で迷信が続いたのでは。
因みに精密工作機械は独語圏でもあるスイスが主で、独逸の得意分野とは言い切れなかったと思います。
その後、シミュレーション技術が進歩し構造最適化の見直しが進むと、リブ補強で重量が増え、とりわけ0.1μ以下駆動の小型高精密機械はムーアの治具グラと似てきて、三点支持。
ビジネス成功者とは言えなくなったが、ムーアの技術的先見性が証明されたと思います。
補足
2016/02/20 11:42
ありがとうございます。
治具研で有名な米・ムーアの本に詳しい説明を見つけました。
データは載らないが在り処を示し、英国の1940年!!
筆起中で来週に紹介します。