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ダイス鋼で高温焼戻し後に表面処理を行うと変寸は無い?メカニズムを教えてください
2023/10/14 21:34
- ダイス鋼で高温焼戻しをした後に、PVDなどの低温表面処理を行うと変寸は無いと言われていますが、そのメカニズムは分かりません。どなたか教えてください。
- ダイス鋼の高温焼戻し後に低温表面処理を行うと、変寸はほとんどないとされていますが、その理由は不明です。解説していただけませんか?
- ダイス鋼の高温焼戻し後に温度の低い表面処理を行うと、変寸は少ないか無いと言われていますが、その理由について教えていただけませんか?
ダイス鋼の変寸について
2006/09/19 14:32
よくダイス鋼で高温焼戻しをした後に、PVD等の温度の低い(焼戻し温度よりも低い)表面処理を行うと、変寸は無いと聞きます。
変寸しないメカニズムが分からないのですが、どなたか教えていただけませんでしょうか。また、変寸しないというのは、まったく無いのか もしくは少ないと言う事なのでしょうか。
よろしくお願い致します。
回答 (4件中 1~4件目)
変寸しないメカニズムを知りたいようですが、変寸するメカニズムを理解するほうが先でしょう。変寸するメカニズムが解ると、焼き戻し温度以下で行う表面処理では変寸する理由が無くなることが理解出来ると思いますよ。
変寸が全く無いとか、少ないとか言う表現も抽象的です。一般のダイス鋼をTD処理とかCVD(TiC等)の高温処理を行えば母材の熱処理変寸をそのまま受けることになります。
質問者の望む変寸率がわからないのですが、通常ダイス鋼(SKD11系)の熱処理変寸率は 0.05%~0.1%程度と思います。(圧延方向で異なりますが高温戻し、300mmで0.15~0.3mm弱)一次の焼入れ焼き戻しを普通(1H/25mmx2回)に行えば、その焼き戻し温度以下での表面処理は10数ミクロンレベルの変寸に落ち着くと思いますよ。高温の表面処理に比べれば 1/10以下と考えて良いと思いますが。
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回答2に補足いたします。冷間ダイス鋼の高温やきもどし後の経年変化は、不安定な残留オーステナイト(比容積 0.12615 cubic-cm/g)が時間経過と共にマルテンサイト(比容積 13085 cubic-cm/g)に組織変化して膨張することによるもので、その長さ変寸量は、SKD11の場合、300mmにつきおおよそ40ミクロン、DC53にて80ミクロンに達します。 これらの経年変化は、350-480'Cの再加熱処理で、100日経過後の変寸量は、300mmにつき10ミクロン以下に低減し、とくに400'Cの「安定化処理」では、変寸はほとんど認められなくなります。 一方、PVDの処理温度は、TiN; 300-500'C, TiCN;または TiAlN;が300-550'Cなので、処理温度を上記の350-480'Cに選択すれば、十分な効果が期待できます。 また、CVDやTRDなど高温(900-1050'C)でのコーテイング処理の場合、180-200'Cの低温焼きもどしでは、経年変化を生じないが、寸法調整のため500-550'Cの再加熱を実施した場合、高温焼きもどしの場合と同様に不安定な残留オーステナイトによる経年変化を生ずる恐れがあるので、寸法調整後に、前記の「400'C安定化処理」を施すことが推奨されます。以上、参考になれば幸いです。
SKD11, DC53など冷間ダイス鋼の高温焼きもどし(500-530'C)後に生じる変寸(経年変化と呼ぶ)は、活性化した残留オーステナイトの分解に起因するものです。すなわち、焼き入れ時に生じた比容積の小さい残留オーステナイト(20-25%)が高温焼きもどしによって、比容積の大きいマルテンサイトに変態しますが、その一部(数%)は分解しきれず、さらに残留して、時間経過とともに分解が進行し、いわゆる経年変化を生じます。 上記の高温焼きもどし後の残留オーステナイトは、200-500'Cにて焼きもどし処理を施すと安定化し、経年変化は小さくなります。とくに、400'C処理で、もっとも効果が認められ、高温焼きもどし処理後の「安定化処理」として金型の精度確保に利用されております。以上。
変寸はほとんどないというのが正解だと思います。
実際は鋼材の表面に薄い皮膜(PVD)が付きますのでほんの少し大きくなります。
豆知識としていくらか簡単に述べておきます。
金型のコーティングにはいくらかの種類があります。
たとえばTDとかが一番有名かも知れません。
TDは1000度ぐらいでコーティングをします。
今言っているPVDは低温で200度ぐらいのコーティングを指していると思います。
ちなみにTICNは500度ぐらいと記憶しています。
ここまで理解した上で焼き戻しの説明を簡単にします。
なぜ、この処理をするのかは過去の投稿をご参照ください。
要は鋼材は焼き戻し(高温、低温)を行うと組織的にその温度までは安定し、変寸はあまりしなくなるということです。
今回の場合、焼き戻し(高温:520度)で鋼材を安定させると200度でのコーティング処理をしてもほとんど変寸しないことになります。(皮膜の分だけ大きくなる。)
TDをすれば確実にひずみます。(必ず、調整が必要になります。)
ですが、これも一長一短あって何でもかんでもPVDでは不都合が出てきます。
それは耐久性の問題です。
PVDは低温でコーティングをするため皮膜はTDに比べて薄いです。
ということは耐久性はTD>PVDとなります。変寸に関しては比べ物にならないぐらいPVDのほうが少ないと私は理解しています。
つまり、金型の手離れの早さにつながります。
ウチではプレス金型の設計製作をしていますが、TDをするかPVDをするかの判断材料として材料(製品の材質)が何であるかで決定します。
よく考えてどのコーティングにするのか決定をしてください。
参考になれば幸いです。
ネット検索ではなくてこのサイトのキーワード検索をすれば質問をしなくてもほとんど答えが出ていると思います。
お礼
2006/09/19 18:46
tara555さん
ご回答ありがとうございます。
ご回答の通り、焼戻し温度以下でPVDを行えば
変寸は少ないと理解しています。
ただ、その変寸は0(ゼロ)なのでしょうか、もしくは少なからず
有るのでしょうか。当然、PVDの膜厚は無しの話です。
また、どういうメカニズムで変寸しないのでしょうか。
ネット検索などいろいろ見てはいるのですが、なかなかそこまで
詳しく教えてくれるところはなくて・・・
もし、ご存知でしたらご教授ください。
よろしくお願い致します。