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SKD11の変寸とは?その原因を解説!
2023/10/18 12:33
- 100x100x50のSKD11のブロック型焼材において、加工後の検査測定時に外形が0.01ほど変寸していることが確認されました。この変寸の原因や修正方法について解説します。
- SKD11は変寸も多い難削材として知られていますが、このような変寸の仕方は経験がないため、原因を掴みかねている状況です。変寸の可能性や修正方法についての経験談やアドバイスをお待ちしています。
- SKD11の変寸について、100x100x50のブロック型焼材において検査測定時に0.01ほどの変寸が確認されました。加工後の変寸の可能性や修正方法についてお知りの方、ご教授願います。
SKD11の変寸について
2011/10/28 20:06
お世話になります
100x100x50(幅、奥行、高さ)のSKD11のブロック型の焼材(生材に業者にて焼きを入れてサブゼロ処理したもの)に6面研磨をあてて、(外形寸法公差は[0、-0.01])マシニング、ワイヤーカット、放電加工を行いました
加工はうまくいったのですが、加工後の検査測定時に外形が全体的に0.01ほど変寸(100.01)しているのを確認しました
焼きいれ研磨から各工程をまわり測定まで、1週間ほどかかりましたが、工程ごとでの測定は100.00の寸法を確認しているので、1日たらずの間で変寸しているように思います
一応、形状的には研磨をあてて修正可能なのですが、客先に送った後、受け入れ検査や実際の使用時までの間に変寸する可能性もあるのかと不安に思っています
確かにSKD11は変寸も多い難削材と認識していますが、こういった変寸の仕方はちょっと経験が無く、原因を掴みかねているところです
経験談等で結構ですので、なにか教えていただけないでしょうか
質問者が選んだベストアンサー
こちらに先達の回答が出たので、調べた結果を報告します。
大同アミスタ:改良鋼種 DC53 のデータ
http://www.amistar.co.jp/on-line/quality/p272-dc53.html
経年変化処理:安定化処理高温焼戻しをした場合、残留オーステナイトの分解反応に伴う
経年変化が問題になる場合は「安定化処理」追加により、経年変化を極小に抑える事が
できます。
■高温焼戻しの場合経年変化(寸法膨張)が生じます。(SKD11も同様に経年変化が
生じます)
■安定化処理の実施で経年変化が極小に抑える事ができます。
■サブゼロ処理(-70~-196℃)では経年変化を完全に防止ができません。
■低温焼戻しでは経年変化が生じません。
次の4つのグラフのデータ比較から変動具合は明かです。
■ 400℃安定化処理
■ 530℃経年変化
■ サブゼロ処理
■ 低温焼戻し
日立金属 改良鋼 SLD-MAGIC
http://www.hitachi-metals.co.jp/pdf/cat/hl-y48-h.pdf
P.6 経年変化
SLD-MAGICはSKD11とほぼ同等の経年変寸を示し、8%Cr鋼よりも変寸率は小さくなります。
低温焼戻しやサブゼロ・安定化処理※により経年変寸を小さくすることが可能です。
※ 経年変寸対策として、焼戻し後に250~450℃の中
温焼戻しを追加実施し、残留オーステナイトを安定化
させる処理。
SKD11
高温焼戻 +11μ/100mm
低温焼戻 -1μ
改良鋼種 SLD-MAGICの方がやや大
http://homepage3.nifty.com/osakaclad/guide4/under5/under1.html
サブゼロ処理は、焼入後速やかに行うことが大切であって、焼入後室温に放置するとサブゼロ
処理によるマルテンサイト変態が進行し難くなります。(図3.11)これは、放置の間に
オーステナイトが安定するためで、図3.11から明らかなように、焼入後直ちに-73℃に冷却
した場合は分率にして0.55(55%)程度がマルテンサイト変態しています。しかし、
10時間放置後行った場合は、わずか0.1(10%)が変態するにすぎず、サブゼロ処理の
効果が出ません。したがって、焼入後30分以内にサブゼロ処理を行うことが重要です。
以上で現象は説明出来ると思います。
安定化処理は後出し追加できるのでは? 時間経てるから効果が薄れるのかもしれないから熱処理屋に相談を。知らないと言うなら
データ掲げてくれた
http://www.lichtseiko.co.jp/technical.html#b_su
などに河岸変えるべきか。。。
私は サブゼロ+低温焼戻 = HRc62 という指定が殆どで、やや精度が低いプラ型なら温度上がる故に高温焼戻が良かろうという程度だったので、経年変化の問題には遭遇しませんでした。
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その他の回答 (9件中 1~5件目)
たびたび申し訳ありません。
>(1)変寸をしっかりと避けるには不平衡相を除く、すなわち400℃以上での高温度での焼鈍をすることになります。
「焼鈍(焼きなまし)」と「焼き戻し」を混同されているように思います。1000℃以上から焼き入れした後、400℃付近に加熱するのは「焼き戻し(tempering)」と呼ばれています。「焼きなまし」は、annealingです。完全焼きなまし(高温焼きなまし)は、焼き入れ温度より少し低い温度(例えば、860℃くらい)から、ゆっくり冷却(例えば、炉冷)することを言います。
また、SKD11を400℃で「焼き戻し」したとしても、オーステナイトは無くなりません。オーステナイトを無くすには600℃以上が必要で、400℃では残留オーステナイト量は焼き入れの状態とほとんど変化しません。
さらに、SKD11に関して言えば、経年変寸を避けるためには、残留オーステナイト量をゼロにすることを目指すより、より安定化する熱処理を選択することが有効です。その意味で、もともと低温でしか使用しないのなら低温焼き戻しで十分ですし、使用温度が高い場合は高温焼き戻しの後、安定化処理を施すことが最近は推奨されています。
回答(5)です。焼き入れた後の材料には熱平衡相のほかに不平衡相のオーステナイトとマルテンサイトとが存在し、時間経過と共に平衡状態に近づきます。前者は平衡相になると体積増加し、後者は体積減少し、いずれも変寸や置き割れの原因となります。
(1)変寸をしっかりと避けるには不平衡相を除く、すなわち400℃以上での高温度での焼鈍をすることになります。
(2)変寸をいくらか許容し、硬さを維持するためには不平衡相のマルテンサイトを残す(低温焼鈍)ことになります。このときサブゼロ処理をも行うことがあります。その理由とは、不平衡相(いずれも)の不平衡の度合いを高める(強い低温度にして)ことで変態を少しでも促進させ、以後の変態を少なくしようというものです。
いずれを選ぶかは使用条件で異なるでしょう。なお、工具鋼は平衡相の状態で販売されておりますが、焼き入れ・高温焼き戻し状態よりも柔らかです。
たびたびの補足で申し訳ありません。
回答(5)では、「高温焼きなまし」と仰っているので、それは間違いではありません。しかし、高温焼きなまししてしまうと硬さが下がって工具鋼としては使い物にならない硬さとなってしまうでしょう。
しかも、通常は、工具鋼は高温焼きなましの状態で販売されているのだから、わざわざ熱処理しなくても、そのまま使えば寸法の径時変化も気にする必要はありません。ただ、治工具としては軟らかすぎるというだけです。
工具、金型として使った場合、金属を加工する場合は、それなりに温度が上がるので、高温焼き戻し(約500℃)をしておくことをお薦めしますが、用途がプラスチック金型だとすると、低温焼き戻し(約180℃)でもOKでしょう。
>寸法の径時変化を嫌うならば、平衡相割合の高い範囲で硬さを保つ(高温焼きなまし)を考えることになる。部材の表面と内部の違いも考えることになろう。
残念ながら、SKD11に関してはそうとも言えません。
冷間ダイス鋼SKD11の高温焼き「戻し」は、「高温」とは言え、熱間ダイス鋼SKD61などよりかなり低い温度であり、かなりの量の残留オーステナイトが残ります。従って、経年変化を抑えることはできません。むしろ逆に残留オーステナイトが安定な低温焼き戻しよりも経年変化には不利となります。もちろん、高温焼き「なまし」してしまうと、冷間ダイス鋼としての実用的な硬さより下がってしまいます。
また、「部材の表面と内部の違い」に関して言えば、SKD11は構造用鋼などより焼き入れ性が良く、実用上は部材の表面と内部の違いを気にする必要はありません。この辺は、原理的な観点より実務的問題です。まあ、実用上の硬さが得られなくても、原理的にはそうだというご意見でしょうけど。
お礼
2011/11/07 08:47
補足ありがとうございます
変寸の原因が焼きにあるようであったので、色々焼き屋さんに話を聞いてみました
その時に、高温焼き戻しではなく低温焼き戻しを使ったほうが良い、ということを言われており、回答5のご意見と少し相違を感じましたが、SKD11に関してはこちらでおっしゃってることが正しいのではないかと思います
(実際に高温、低温での比較はしてませんが)
技術的な観点は皆さんがお詳しいので、やや原理的な観点(熱処理・変態・熱不平衡・寸法変化)から、温度条件と材料内部での相変化を述べます。
1、鋼を高温に保ってオーステナイト相(fcc鉄)にしておく。
2、これを徐冷すると平衡相(bcc鉄と化合物Fe3C)に分解するのだが、急冷することで、部分的に高温相・平衡相が生じるほかに不平衡相(マルテンサイト相)が生じる。マルテンサイトの硬さが期待されている。熱的に不平衡なオーステナイトとマルテンサイトが残存する。マルテンサイト化は低温度域の短時間で生じ鋼の体積が3%程度は増加する(これも難点)。
3、不平衡相(オーステナイトとマルテンサイト)は常温あるいはそれ以上の温度で平衡相に近づく。比較的低温度で保持(焼き戻し)することで主にオーステナイトがマルテンサイト化する。体積増加と硬さ上昇。比較的高温度での焼き戻しでは、オーステナイトは消滅し、マルテンサイトも平衡相にそれなりに近づく(体積減少)。近づきの程度(不平衡の度合い)で以後の径時変化が異なる。当然不平衡相を大きく減らせば径時変化はなく、同時に硬さも失われる。
寸法の径時変化を嫌うならば、平衡相割合の高い範囲で硬さを保つ(高温焼きなまし)を考えることになる。部材の表面と内部の違いも考えることになろう。
お礼
2011/11/07 08:51
回答ありがとうございます
オーステナイトやマルテンサイトが頭に入ってなく、腰を落ち着けてゆっくり読ませていただきます
ただ、取引のある焼き屋さんの話ではSKD11に関しては、変寸を押えるには
低温焼き戻しが有効であるということを言われましたが、高温焼き戻しと高温焼きなましは別物ですよね?
焼きいれ→低温焼き戻し→サブゼロ→高温焼き戻し
とかになるのでしょうか???
お礼
2011/10/31 15:20
丁寧な回答ありがとうございます
今回の変寸量は100mm幅に0.02ほどなので、
今回提示していただいたデータと合致しますし、回答1に提示していただいた、別質問のなかの熱処理変寸データとも、ずばりあってきますね
やはり、熱処理後1、2週間の間に起こる短期的な経年変化が起きていたようです
SKD11の100mm~80mm幅の焼きいれ物は結構やっているのですが、今回の外注は使ってないので焼入れの手法や条件などに関係があるかもしれません
ありがとうございました