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圧力による変態とは?理解とメカニズムを解説
2023/10/15 22:31
- 金属材料には圧力によって変態が起こりますが、その具体的なメカニズムはよく知られています。
- 圧力とは、空気圧や水圧などの力学的な圧力によっても変態が起こりますが、圧縮などの力学的な要素も関与しています。
- 圧力による変態のメカニズムは複雑ですが、金属材料の結晶構造や分子の配置の変化が起こることで、物質の性質が変化します。
圧力による変態
2008/11/21 00:38
金属材料で圧力によって変態が起こると本に書いてあるのですが,よくわかりません.圧力とは空気圧や大気圧,水圧などの圧力で変態が起こるのか,または圧縮などの力学的な圧力なのかがわかりません.
なぜ圧力で変態が起こるのかも是非教えていただければと思います.
回答 (4件中 1~4件目)
話しが、だいぶ話しが錯綜しておりますので、ここで教科書的に整理してみましょう。
冶金学的には、変態は、3つ因子があります。 つまり“温度”“応力
”“時間”です。
変態でのの組織的な変化は、沢山ありますが、話しの継続性からマルテンサイト変態について書いておきます。
1,温度依存性:熱処理による変態 (例:マルテンサイト変態)
鋼を例とすると、常温の鋼(フェライト+セメンタイト:パーライト組織)を加熱して温度を上げていくと、723℃以上で突然、原子の配列が変って性質の異なる組織(オーステナイト)になってしまう。この突然、変異を起こす温度を「変態点」と言い、この現象のことを、“変態”という。つまり変態とは、性質が全く異なったものへと変化することを冶金学的には変態という。 (オーステナイト変態)
この逆変態になるが、この付近(実際には、870~910℃)の温度から、鋼を急冷すると、フェライトの組織内に、炭素がbcc格子の一軸を引き伸ばし、炭素が進入した結晶構造(過飽和状態)となり準安定な組織であるマルテンサイトに変化する。(マルテンサイト変態)
つまり、温度の操作により変態を発生させることができる。
2.圧力依存性:冷間加工(応力=圧力=外力)による変態
ここでは、冷間加工でマルテンサイト変態をする、準オーステナイト系ステンレス鋼を例に説明する。
SUS304は、熱力学的安定性が高くない(オーステナイト安定度が低いとも言う)ため、準安定オーステナイト系ステンレス鋼とも呼ばれている。
このSUS304を、過酷な冷間(常温)で深絞り加工すると、素材に高いエネルギー(圧力)が、加えられる。強い圧力を受けることにより、熱力学的に安定な組織であるマルテンサイトに戻ろうとする現象(マルテンサイト変態)を起こす。つまり常温でのマルテンサイト変態を起こす。 この現象のことを加工(応力)誘起マルテンサイト変態という。つまり温度ではなく圧力=応力のみで、変態を起こしてしまう。 組織が変わった証拠には、磁性を生ずることと、硬度の著しい上昇がある。
これは、準オーステナイト系ステンレス鋼及び、高引力鋼でのみ生ずる変態である。
3.時間依存性
時効硬化(歪み時効)時間の経過とともに、硬化する現象がある。
つまり時間の経過とともにマルテンサイト変態する現象のこと
詳しい説明は省略する。
◎ その他 (参考)
3.ショットピーニングと変態
通常のショットピーニングでは、焼き入れ鋼などに行う場合、表面相に圧縮の残留応力を生じさせ、疲労強度向上が主な目的である。表面硬度も上がるが、マルテンサイト変態はすでに熱処理により、マルテンサイト変態は終了しており、硬度の上昇は、結晶の微細化あるいは加工硬化と考える。
但し、WPCと言われる微粒子ショットピーニングを行うことにより、鋼製品の表面温度をA3変態点以上に上昇させてマルテンサイト変態を生じさせる表面加工熱処理方法がある。
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外圧による変態があります。
誘起変態が該当します。
熱処理後、表面をたたく事で、変態します。
具体的はショットピーニングがあります。
焼入れ表面高度からさらに高度が上昇します。
ある程度の残留オーステナイトが表面近傍にある組織により硬化的です。
お礼
2008/11/22 22:55
なるほど外圧の変化でも変態を起こすのですね.
ありがとうございます.
SUS304のようなステンレスは準安定オーステナイトですが、冷間加工によりオーステナイトが変態してマルテンサイトになります。
冷間加工=力を加える=応力=圧力ということではないですか?
鋼でも熱処理後に残留オーステナイトが時間とともにマルテンサイト変態する場合があります。
これは鋼の残留オーステナイトが不安点なために変態を起こすものです。
補足
2008/11/21 18:06
syo002さん投稿ありがとうございます.
同じ温度域(オーステナイト:γ鉄)で変態することがあるということですよね?ということは不安定な結晶構造を持つ材料に加工を加えた場合変態が起こる可能性はあるということですかね?
残留オーステナイトが結晶構造的に不安定な状況であれば変態を起こすこともあるのですね.とても参考,勉強になります.
一般的には温度によって金属の変態たとえば鉄の場合結晶構造が変化して
α→γなどの同素変態が起こります。金属は外部からエネルギーを受けて
(または放出して)内部拡散が起こり変態することになります。
実際には金属を加熱する場合,気体を媒介とします。気体からエネルギーを
授受するため,気体の有するエネルギーに関与すると置き換えてもよいと
思います。理想気体ではPV=RTの法則(状態方程式)があり,温度は圧力の
関数で与えられます。PVの変化がエネルギの変化 Δ(PV)を示します。
つまり,温度は系のエネルギのレベルを示す指標で,温度には圧力が関与
するという意味だと思います。
お礼
2008/11/21 12:39
やはり圧力によって温度が変化することを意味していたのですね.
本の書き方的に別の意味合いがあるのだと思っていました.
大変参考になりました.ありがとうございます.
お礼
2008/11/25 12:45
大変参考になります。
もやもやが取れました。
ありがとうございます。